いつの時代も、信頼できる先輩やメンター的な人物は仕事を続けていくうえで絶対不可欠な存在です。しかしながら、人間関係が希薄になった現代において、なかなかそういう存在に出会うことができなくなっているのではないでしょうか?そういう時代背景を受けて、働く女性の相談に乗ってくれるというサービスが開始されました。

女性だけの、女性による、女性のためだけの「 育キャリカレッジ 」というサービスです。

一対一で仕事上の悩みや将来について相談できるメンター。制度として導入する企業は多いが、働く女性の様々な問題に対応できる人材が社内にいるとは限らない。悩み多き女性たちに寄り添い、その背中を押す社外のメンターたちが活躍している。

転職・育児…本音で相談

営業職として働きながら6歳と1歳の子を育てる30代の会社員、近藤さちさんは2人目の育児休業中から社外のメンターに助言を求めている。相手は日本ロレアルで副社長を務めた安藤知子さんだ。

近藤さんが利用したのは、ワーキングマザーの支援を手掛ける「 育キャリカレッジ 」( 東京・港 )が昨年始めた外部メンターのサービス。30~40代のワーキングマザー世代の悩みに答える女性メンターが11人おり、起業や転職、育児と介護、学び直しなど様々なテーマに沿って相談相手を選べる。

女性なら有料で仕事などの悩みを相談できる。価格はメンターによって異なるが、安藤さんを指名した場合は1時間1万3千円だ。

パソコンやスマートフォンの通話ソフトを使って、どこからでも利用できる。「 仕事と育児のバランスに葛藤しています。 」近藤さんがパソコン画面越しに打ち明けると、安藤さんは「 復帰後の3カ月、次の3カ月と区切り、仕事のギアを上げていくのはどうかしら 」と提案した。

近藤さんが社外メンターを依頼したのは「 社内にはない視点を取り入れ、利害関係のない人に自分の本音をさらけ出せる安心感があった 」からだ。同じ職場の人には打ち明けられない焦りや不安、将来の希望も正直に話せる。

別の40代の女性は「 ずっとモヤモヤとした気持ちを抱えていた 」という。「 人生100年時代といわれ、ずっと働きたいけれど今の会社でいいのか。 」出産を経て社会に役立つ仕事をしたいと思ったが、勤務先ではかなわない。興味の赴くまま勉強会にも顔を出したが「 なんで40歳にもなって迷走してるんだろう 」と落ち込んだ。

安藤さんに「 いつか点が線になるから、1年くらい迷走したっていいじゃないの 」と言われ、自分を肯定できたという。4回の相談を経て転職を決め、ボランティア活動も始めた。「 深く話を聞いてくれ、少しずつ気持ちがクリアになった。自分一人では整理できなかった 」と振り返る。

安藤さんは女性と向き合うなかで「 個人に合わせたリアルな相談ができる場所が必要とされている 」と感じる。社内で女性を支援する制度が整いつつあるものの、社会には情報があふれ、困惑している女性も多いとみる。「 自分の意思で決断ができるようにサポートしたい 」という。

育キャリカレッジが今年2月、働く母親100人に調査したところ「 メンターがいる 」と答えたのは32%。そのうち大半が社外で「 社内に女性メンターがいる 」人は7%だった。育キャリカレッジの池原真佐子代表は「 時短勤務など制度は整ってきたが、女性がキャリアアップのために相談できる仕組みはまだない 」と指摘する。

メンター役になる女性たちには、あらかじめコーチング理論や、現代の働く母親の心情などについて講義している。

実技テストも実施する。経歴は多彩で、夫の海外赴任で海外に暮らしたり、出産後に大学院に進学したり、企業で新規事業を立ち上げたなど、様々。悩みながら工夫を重ね、キャリアを築いており「 経験知を眠らせず、次世代につなぎたい 」( 池原代表 )との狙いもある。

社内にメンター制度を導入している企業もあるが、女性登用のコンサルティングを手掛けるアルファ・アソシエイツ( 東京・千代田 )の藤原美喜子社長は「 相談したら他の社員に漏れるのではと不安に感じる人もいる 」と話す。藤原社長がメンターとして、企業や官公庁の女性職員と接していると、誰にも話せずに悩んでいる人がいかに多いか驚くという。

他社の事例が参考に

「 管理職になったら、周りの人たちが急に冷たくなった 」「 部下を動かすのが難しい 」といったキャリア上の問題はもちろん、「 夫の仕事が主で、自分も仕事をしているのに家事や子育てを全て任される 」という悩みも。パワハラやセクハラにあっている場合は情報取り扱いに配慮のうえ当該企業の担当部署に伝えるが、基本は秘密厳守。社外だからこそ私生活まで打ち明けられることも多い。

リーダーになるのをためらう女性には「 誰でも初めてのことは不安。管理職になる条件は覚悟を決めるかどうかだけ 」と親身に寄り添う。

全国信用協同組合連合会( 東京・中央 )の信組支援部の古川双葉上席主任( 42 )は藤原さんと話して管理職を目指すことを決めた。1992年に一般職として入社して以来、地元の福岡支店で勤務。仕事は好きだが、管理職に就くことは念頭に無かった。参考になるようなロールモデルもおらず「 自分に務まるのか、不安が大きかった 」が、藤原さんと話して「 他社の事例も聞けた。

今までの経験に自信を持ち、さらに成長して、取引先のためにも役に立つ仕事をしたいという思いに変わってきた 」と振り返る。

全信組連は2年前から藤原社長に女性職員への研修と社外メンターを依頼。女性も管理職に昇進できるよう人事制度を変えたところで、意欲を引き出すのが目的だった。

内藤純一理事長は「 男性職員では組織内部の立場でしか話せず、説得力が弱い。他社の現状と比較しながら女性登用の現状や管理職のあり方について話してもらうことで、女性職員にとって参考になる 」と説明する。古川さんと同様に管理職を目指す女性が増え始め、外部メンターの導入が女性活躍の「 実を結んできた 」と手応えを感じている。

外部委託も一つの策 ~取材を終えて~

このまま働き続けられるのか、どうキャリアを磨けばいいのか。長く働くうちに一度は悩むだろう。育児や家事、介護などを担いながら働く女性なら事情はさらに複雑。話を聞いてもらい適切な助言が得られれば、モチベーションアップにもつながる。

ある育児中の女性は「 職場では昼はみな黙々と仕事をし、自分は午後6時には退社。雑談の時間はない 」と話す。社内でキャリアについて話せる機会は少なくなっている。傾聴方法など専門性を持ち、秘密を守ってくれる外部メンターの存在は大きい。人を生かすために企業が外部委託するのも一つの解決策かもしれない。

( 関優子、田辺静 )

2018年8月20日 日本経済新聞朝刊 より引用

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