近年、転職市場で評価が高まっている「サーバント型」のマネジャー。サーバントとは召使や奉仕者といった意味で、従来の命令型のリーダーと異なり、チームのメンバーを「奉仕」や「支援」を通じて育て、チーム力を向上するタイプです。新年度から組織や役職が変わり、新しい後輩、部下とのコミュニケーション・育成方法に悩んでいる方は、サーバントスタイルのマネジメントを試してみてはいかがでしょう。私自身がマネジャー時代に実践し、成果につながった5つの方法をお伝えします。

■「サーバント型」が人気の理由

4月の新年度スタートから2カ月がたちました。組織変更や異動などで新たなメンバーとともに働くことになった方々は、後輩や部下に対して「何を考えているかつかめない」「どう接したらいいかわからない」「今の指導の仕方でいいのか迷う」などと悩むことも多いのではないでしょうか。

以前、「いま転職市場で『売れる』4つのマネジャータイプ」や「管理職も営業も 変わる女性の採用、チャンスはここに」の記事で、「サーバント型」のマネジメント人材が求められている傾向をお話ししました。

「サーバントリーダーシップ」は、米国のロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱した、「奉仕こそがリーダーシップの本質」という考え方。リーダーの役割とは「指示を与えて遂行させる」のではなく、「ゴールを示した上で、メンバー自身の考え方・やり方に任せ、目標実現をサポートする」ということです。

最近の若手は、「競争させない」「個性を尊重する」という方針のもとで育ってきているため、こうしたマネジメントスタイルの方がモチベーションの向上に有効と考えられています。

今後、マネジャーのポジションでのキャリアアップや転職を目指すのであれば、この手法での成功経験を積んでおくと武器になる可能性があります。

では、どのように実践すればいいのでしょうか。

私は会社員時代、営業部門や新人育成部門のマネジャーを務めていた時期があります。当時実践していたマネジメントは、いま振り返ると「サーバント型」だったと思います。私のグループは社内でトップの業績を上げ、「どうしたらこんなにモチベーションの高い人材が育つの?」と尋ねられたものです。当時のメンバーは現在、社内の重要なポジションに就いたり起業したりと、大きな成長を遂げていますので、そのときのマネジメント手法は間違っていなかったのではないかと思います。

そこで、私がどんなことを実践していたか、一例をご紹介します。

(1)自分がオープンに話し、本音を引き出す

その人の「やる気」のスイッチがどこにあるかを探るために、私はメンバーの生い立ちを聞くことで、その過程で形成された価値観を理解するように努めました。

メンバーと1対1で面談。それも社内の会議室など改まった場所ではなく、一緒に食事に行くなど「オフ」のリラックスした状態で話せるようにしました。そこで、仕事への考え方以前に、育ってきた環境や学生時代の過ごし方、友人関係などを聞いたのです。

このとき、いきなり相手に「さあ、話して」と促すのではなく、まず私自身のことを開示し、話しました。子どもの頃から学生時代の話、この会社に入った理由まで、プライベートの情報もすべてさらけ出したのです。すると相手も「この人にはここまでオープンに話していいんだ」と安心し、自分のことを話してくれました。その中で、その人が何を大事にしているかをつかむことができたのです。

(2)わかりづらいメンバーは周辺から情報収集を

しかし、そのように接しても、なかなか心を開いてくれないメンバーもいます。とはいえ、日常の姿からその人の本質を探ろうにも、私も顧客訪問や会議などで席を外すことが多く、常に観察していられるわけではありませんでした。

そこで私は、どこか斜に構えたところがあって本音を話さない「わかりづらい」A君について、他のメンバーから話を聞きました。メンバーによると、A君は実は面倒見がよく、後輩から相談を持ちかけられると、自分のことを後回しにしてでも時間を割いて対応してくれるのだとか。自己主張をしないので組織内では目立たず、損しがちなタイプなのですが、人を思いやる気持ちが強い人だったのです。

A君の一面を知り、私は改めて、自分の主観だけでなくいろいろな人の視点でメンバーを捉えることの大切さを実感しました。

(3)個々の強みが生かせるチャンスを作り、提供する

A君の場合、自分が高評価を得るよりも、人との関わりを大切にしたいという価値観を持っていました。そこで私は、彼にチームリーダーを任せることにしました。彼はリーダーという立場に立ったことで、メンバーへの思いやり、面倒見の良さ、責任感の強さなど、本来の持ち味を発揮。メンバーもそれに応えるように、器用ではないリーダーを「自分たちが支える」という意識で行動しました。チームビルディングで成果を上げたA君は大きな成長を遂げ、後に部長のポジションにまで昇ったのです。

新しいアイデアを考えることが好きなBさんには、「会議で取り上げるテーマの原案を考えてほしい」という役割を任せました。彼女にとってはやりがいある仕事なので、メンバーにプレゼンするときにはイキイキとした表情を見せ、参加メンバーもそのテンションに引っ張られて会議が活性化しました。

このように、メンバーがやりたいことや得意なことをメインの担当業務以外の部分で任せることで、本人のモチベーションも周囲の評価も上がるケースがあります。特にチームや組織への貢献という観点でアサインすることも心がけました。まさにそのミッションが、メイン業務にもプラスに生きてきます。

(4)やり方は任せ、「自分でやり切った」感を持たせる

仕事の進め方において、私は自分のノウハウを教えてまねさせるのではなく、本人がやりたい方法でやらせていました。他のマネジャーからは「甘いのでは」と言われたこともありましたが、そのほうが仕事を「やらされている」ではなく「やりたい」と感じられると思ったからです。

特に社会人になりたての新人には、スタート時点で「仕事っておもしろい」という意識を根付かせることが大切だと思います。

マネジャーから細かく指示を与えられれば、「それさえこなせばいい」という安心感はあるでしょうが、自分で考えることの思考が停止します。必死で考え、やってみる。自発的にやって成果を出すことができたら「ワクワク感」につながるのではないでしょうか。ワクワク感こそ、壁にぶつかっても乗り換えて、その先を目指すモチベーションを生み出すキーワードだと思います。

私の場合は営業マネジャーでしたが、メンバーの営業に同行する際もあまり口をはさまず、本人がいつもどおり進めるのを見守るように心がけていました。途中、もどかしく感じる場面もありますが、本人のペースで進めさせ、注意事項は後でフィードバックするようにしたのです。

あるメンバーからは、「営業の現場で、話を遮られることなく言いたいことを言い切ったから、自分の中で満足できていました。だから、後で注意されたことも素直に受け止めることができました」と感謝されたことがあります。

(5)失敗を許容し、「私が守る」というスタンスを見せる

私はメンバーの失敗をとがめたり責めたりすることもあえてしませんでした。メンバーが失敗を恐れ、チャレンジしなくなることを防ぐためです。

これは、あるメンバーから言われた言葉です。

「自分が『見守られている。許容されている』という安心感があったから、新しいことにチャレンジしてみよう、という気持ちになれました」

組織で働いていると、「失敗したり叱られたりするのは怖いから、余計なことはしないでおこう」という自己防衛に走りがちです。でも、それでは成長を促せません。私の場合は、「思いついたことは、どんどんやっていい。それで失敗しても、私がすべて責任を取る。必ず私が守る」というスタンスでメンバーに接していました。

人は「これはやめておいたほうがいい」と考えるときの脳と「これを試してみよう」と考えるときの脳を比べてみれば、分泌されるアドレナリンの質が異なっているのではないでしょうか。後者のほうが、きっと楽しいし、やりがいにつながると思います。

マネジャーが、「失敗を許す、受け入れる」というスタンスを持つことで、メンバーの成長が促進されます。そうして、「指示だけこなす」のではなく、「自走できる」メンバーが育てば、結果的にマネジャーである自分も細かく指示を与える時間を省けて、付加価値の高い仕事にシフトできます。

メンバーへの接し方で悩んでいる方は、こうした方法を試しながら、自分に向くマネジメントスタイルを探ってみてください。将来のキャリアアップにきっと役立つはずです。

2018年6月1日 NIKKEI STYLEより引用

スポンサードリンク


-300x250 執事型?転職市場で評価が高まっている新たな管理職の実態とは
おすすめの記事