職場での人間関係に疲れ果てた40代サラリーマン達が、田舎での生活に憧れ、農家に転身するという話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

しかし実際、農業は自然を相手とした仕事なだけに、「なかなか思うようにいかない、サラリーマンの方が良かった」などの声が上がってきます。

人間関係も、TVなどではフレンドリーで親しみ深そうな人々ですが、現実問題、田舎に行けば行くほどより閉鎖的になるので、「田舎の人たちは思ったほどフレンドリーじゃなかった。」と後悔している人たちも実際多いのです。

渡辺さんも田舎に憧れ、移住した一人です。

渡辺さん(仮名、45歳、独身)は5年前に東京都内から山梨県に移住し、ある農業生産法人で働いている。大学を卒業した1995年は、いわゆる「就職氷河期」の真っただ中だった。

堅実な公務員家庭に育ち、都内のそこそこの大学を出た自分は、そこそこの企業に入社して、そこそこの人生を送れるものだと甘く考えていたが、全くの当て外れ。かろうじて採用されたアパレル関係の会社は業績が振るわなかったのに加え、相性も合わず退社した(後日、会社は倒産)。

次に就いたのは、某広告代理店の営業職。テレアポ(テレホンアポイントメント)、飛び込み営業など過酷なノルマを負わされたが、仲間との競争を何とかしのいでいた。

しかし、40代にさしかかるころには、さすがに勝ち続ける自信がなくなった。「追い込まれた彼」を心配した知人が「気晴らしになれば」と、関東近郊での週末農作業のボランティアを勧めてくれた。

これにハマった。広告代理店の営業目標は週単位でクリアしなければならない。1年に50回も成果を問われ続ける。

農業で出会った年1回サイクル

 一方、農業は年1回の収穫に向かって作業する。営業よりはるかに長いスパン、大きなサイクルで過ごせる。

「こういう穏やかな世界もあるんだ」

気疲れ、人疲れに「しんどさ」を感じていた彼にはとても新鮮だった。

「ひょっとしたら農業こそが自分の天職だったのかもしれない」

独り身という身軽さもあり、「移住・就農」を視野に入れて、それまで以上に熱心に様々な農業の現場に出掛け、汗を流すようになった。

とはいえ「東京者」にとって、農家での作業は身体的には想像以上にハードだった。

渡辺「農家の人は淡々と黙々と働く。僕より体力、持久力のあるおじいちゃん、おばあちゃんがいっぱいいます。『こんな自分にやっていけるのか?』と思ったとき、初めて農業生産法人の存在を知りました」

移住先自治体が就農を支援

移住を促進する地方公共団体では、様々な方法で就農希望者に職場をあっせんしている。

渡辺「紹介された法人の代表が私の営業経験も評価してくれたので、今では流通、拡販、イベントまで、いろいろな場面で働かせていただいています」

誰がどうやって作ったか詳しく知らない商品をひたすら売り込むだけの営業とは違い、自ら作った農産物や、それを原料とする加工品を販売する、ほぼ全ての行程に関われる仕事はやりがいもひとしおだそうだ。

梶原「農業移住はいいことだらけ?」

渡辺「そうとも言えません」

梶原「ほお」

渡辺「今は地方の行政が移住者に対し、医療、子育てなどの面倒を手厚く見てくれます。安価な住宅提供も珍しくないです」

梶原「『移住』で検索すると、ものすごい数の地方自治体が、移住のメリットをアピールしていますね」

渡辺「ところが、実際には、思わぬことが理由になって移住に挫折する人がいる。しかも、そのことを、行政のホームページなどで知ることのできるケースは、まずありません」

車社会が封じる「ちょっと一杯」

移住に立ちはだかる「思わぬ壁」って、何だろう?

渡辺「移住先って、多くの場合、完璧な『車社会』です。職場への交通手段はほぼ100%車ですね」

「特急の停まる○駅から15分の好立地」の「15分」は「徒歩」ではなく「車で」というのは常識だ。ところが、歩いたら2時間はかかることに気づかない、残念な都会人がいたりする。移住先では「徒歩で」という概念を捨てなければならないらしい。

渡辺「車のおかげで、買い物なんかは都会より便利なぐらいです。ショッピングセンターへも渋滞なしで行けますから。ところが、東京では当たり前の『仕事帰りにその辺で軽く一杯どう?』という会話はありません。全員、車ですから」

そんな些末なことはどうでもいい気がするが、渡辺さんにはそれが一番つらかったという。ストレスフルな営業マン時代の彼を支えたのは仕事の後の「軽く一杯」だった。仕事をしくじった仲間や部下を慰めたのも「このあと、軽く一杯どう?」の一言だった。

運転代行付き宴会は大仕事

梶原「代行(飲酒で運転が出来なくなった人の代わりに、依頼者の自宅に自動車を送る運転代行サービス)があるでしょう?あれを利用すれば、地方だって、軽く一杯行けるんじゃないですか?」

渡辺「代行の台数は限られていますし、複数台を、時間や場所や帰宅経路を指定して手配するというのは、手間とお金と覚悟がいるビッグイベントです。誰が計画立案し、経費はどういう割合で負担するのかなど、具体的に考えると気が重くなりません?」

梶原「地方で『軽く一杯』は、あんまり軽くないんだ……」

渡辺「たとえば、地元の男性は仕事が終わると職場から自宅へ車で直行、まず風呂。その後は奥さんが用意した夕飯を家族そろって楽しみながら、お父さんはゆったり晩酌。おおむねそんな穏やかな日々を過ごしています」

地方に残る濃密な「おもてなし」

梶原「東京時代、渡辺さんが電話やLINEで『今、新宿なんだけど、時間ある?軽く一杯どう?』なんて飲み回っていたのより、よっぽど健全じゃないですか 」

渡辺「そうかもしれません。そんな私をかわいそうだと思ってか、移住直後は、仕事終わりに『一杯どう?』って誘ってくれる人が結構いました」

梶原「なんだ、いいじゃないですか!」

渡辺「しつこいようですが、車社会ですから、『ちょっと一杯』のスケールが違います。仕事を終えたら、私も、うかがう先の人もそれぞれ自分の車を運転しお宅に向かいます。ご家族の皆さんと食卓を囲んで、誘い主である旦那さんと晩酌をご一緒して、その夜はお風呂をお借りし、用意してくれた寝間着に着替え、広い客間に延べていただいた布団に入って就寝。翌朝、お世話になった奥様、お子様、おじいちゃん、おばあちゃん、飲みに加わってくださったご近所の方々に見送られ、その家からそれぞれ自分の車を運転して会社へ向かう――みたいな感じです」

梶原「す、すごいおもてなしですねえ」

渡辺「最初は、ろくな手土産も持たずに出掛けた無礼をつくづく恥じました」

都会のドライな人間関係に慣れきった渡辺さんには、濃密なひとときをどう過ごしていいものか、戸惑いがあったことだろう。

移住先に進んでなじむ意識が重要

渡辺「こういう人間関係を面倒くさいと思う人は、移住に向かないと思いますね。私の場合は、営業マンとはまったく別の『農業』という世界で『思わぬ楽しみ』を見つけられたのだから、都会暮らしでは絶対に味わえない、豊かな対人関係を楽しんじゃおうと心に決めました。おかげで、充実した『移住5年目』を迎えることができたんだと思います」

「○○県に暮らしてよかった」「豊かな自然・乱舞するほたるの里△△」「手を伸ばせば届く海と山の恵み□□村」

移住案内にあるキャッチコピーや素敵な映像に最も反応を示すのは「氷河期世代の都会のサラリーマン」との声もあるらしい。

「転職としての移住」を志すなら、渡辺さんの教えてくれた「移住先での『軽く一杯』」は意外と軽くない」という教訓を胸にとどめておいたほうがよさそうだ。

2018年5月24日 NIKKEI STYLE より引用

農家が直面している諸問題

様々な可能性を秘めた分野である農業は、サラリーマンを始めとする様々な異業種からの参入者が後を絶たない。

そんな農業が直面している問題点は、TPP、食料自給率、後継者不足などの問題を抱えています。それらの問題解決の糸口となるのは、農業経営力の強化です。近年、アメリカ型の機械化された大規模経営、高付加価値農作物の栽培などが活発になりつつあります。

そのような背景があるため、若者の就農も活発化され盛り上がりを見せています。同じように、流通業界やサービス業界が、それぞれ専用の農場を開設するなどの動きも見られます。

しかし、今もっとも注目されるべきは、IT企業の参入です。IT企業が環境制御システムを、積極的に開設するなどの動きを見せています。農業のIT化によって、他業界からの新規参入が加速化し、業界は今変わろうとしつつあります。

その影響もあってか、40代サラリーマンの平均年収以上である水準も、さらなる伸びを見せているのです。

万が一の場合に備えて別の収入源を確保しておきませんか?

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